水着の点数・フレン編   

 「まったく……ひどい目に合いましたよ」
 レイヴンのとばっちりでファイアーボールを受けたフレンは、ほうほうの体でユーリとレイヴン、そしてパティの所に戻ってきた。離れたところで、エステルが必死にリタをなだめている。
「マジックパリィがあったら、ダメージはほぼ受けてはないけど……」
 何で戦闘中でもないのにスキルを発動しなければならないのか……まったく腑に落ちないとその顔が言っている。
「リタは容赦ねぇからな」
「ホント、お気の毒様」
「リタ姐は短気じゃからのう」
 3人とも笑いをかみ殺している。フレンは額に手を当てた。
「僕が評価をつけたわけではないですよ?」
 恨めしそうなフレンとは対照的に、こらえきれなくなったのか、レイヴンがカカカと楽しそうに笑った。
「いやいや若人よ、災難も振り返れば人生のこやしとなっていることもまた、あるのだよ」
「そうじゃ! おっさんと違ってフレンなら、海の中できらめく珊瑚よりも素敵な、人生のこやしになるのじゃ」
「……ちょっとパティちゃん。どーしてそこでおっさんを引き合いに出すのよ…」
 フレンは突如、頭痛に見舞われたようだった。眉間に深い皺が寄っている。
「だいたいあなたたちは……水着姿の女性に点数をつけるだなんて、どうかしてます」
「ウチは90点だったのじゃ〜♪」
「ある意味、だろ?」
 ツッこむユーリをよそにフレンは頭を抱えそうな勢いだった。
 ……何でパティがエステリーゼ様よりも上なんだ?基準が分からない……とぶつぶつともらしている。
「おまえ、それ、気になりすぎだろ」
 ユーリは、やや疲れてきた。誰が何点だろうが、どうでもいいではないか。
「何よー、いいじゃない、点数くらい。それにー、そんなに俺様のつけた点に不満あるなら、フレンちゃんだったら何点つけるのよ?言ってみなさい!」
「ええっ、僕ですか?」 
 レイヴンに迫られ、フレンはしどろもどろになった。騎士団の上下関係というのは体に染み込むくらい厳しいものがある。相手が元隊長首席だと思うと、否が応にも強制力を感じてしまう。
 それでもフレンは一応、あらがってみた。
「たとえシュ……レイヴンさんのお言葉でも……女性に点数なんてつけられるわけが……」
「おい、フレン。おっさんのつけた点数にマニアックとか言ってる時点で、おまえにはおまえの順位があるってことだろ?」
「ユーリ!君は!!!」
 非難のようなフレンの口調がまるで聞こえていないのか、ユーリはそしらぬ顔で明後日の方を見た。
「まーまー、とりあえず、エステル嬢ちゃんが80点ていうのは妥当じゃない? そこから……」
 不穏な空気を察したレイヴンが、話を引き戻す。
「エステリーゼ様は90点かと」
 一変してフレンは真顔になった。どうやらそこは譲れない何かがあるらしい。
「……おいおい、点数つけられねーんじゃなかったのかよ」
 こりゃ完全におっさんに乗せられたな、とユーリは呆れた。
「あ…あ、そう? じゃ嬢ちゃんが90点なら、リタっちはどうよ?」
 腹をくくったのか、レイヴンの問いかけに、真顔のまま淡々とフレンは答えた。
「そうですね。70点というところでしょうか」
「……なんかリアルな数字だな」
 ユーリの反応とは対照的に、レイヴンは興味津々だ。
「じゃ、パティちゃん」
「水着ではないので、圏外です」
「なんじゃー!? なんでウチだけが仲間外れなのじゃー???!!!」
「そうよ! パティちゃんのだって、みんなと一緒にもらったんだから、水着扱いよ!」
フレンの答えがよほどご不満だったのか、パティとレイヴンが暴れ始めた。
「では70点」
 表情を変えることなく、フレンは端的に答えた。
「とりあえず、穏便にすませたい点数だな、そりゃ……」
 先ほどまで頭を抱えていたのはフレンだったはずなのに、今度はユーリが額に手を当てた。
 不意にレイヴンがずいっとフレンに寄った。その目は真剣そのものだ。
「つ・い・に真打ち登場よーー。ジュディスちゃん!!!! ジュディスちゃんは何点!!??」
 初めてフレンの表情に変化が現れた。
「か……彼女ですか……確かに圧倒的でしたが……」
 レイヴンのつけた2兆点という点数を聞いてうっかりもらした言葉が、今はもうだだもれである。顎に手を当て、フレンはうーんと考え込んだ。
「おいおいおい、真剣に悩むなよ……」
 呆れを通り越した先にあるのは脱力感なのか……ユーリはため息をはいた。
「エステル嬢ちゃんが90点、その他2人が70点なのよ。だったらジュディスちゃんは……」
 傍目に見ても分かるほどフレンの顔が赤くなる。
「500点……?」
 言った直後、あああーとフレンは頭を抱えた。
「おかしい。100点満点のはずが、超えてしまった……」
「……そこかよ」
 リタが聞いたら、俺らみんなタイダルウェイブ100連発の刑だな、こりゃ……。
 フレンを見舞ったはずの頭痛が、今度はユーリに襲いかかってきた。
「むうー、やっぱりジュディス姐は超えられんのー」
「ほらみなさいよー! やっぱりジュディスちゃんは別格なのよ!!!」
 レイヴンだけが一人、元気一杯である。
「レイヴンさんのおっしゃったとおりになるだなんて……何点満点なのか聞いた自分が愚かでした」
「いや、だからおまえ………実は天然だろ?」
 疲労感あふれるユーリが、一応ツッこみを入れた直後……
「あーんーたーたーちー」
 その場に居た全員が飛び上がった。
「性懲りもなく、まだそんなくだらないこと、やってたんかーい!!!!」
「いや……今回は俺様は無実……っって、ギャー!!!」
 突如現れた巨大な渦がレイヴンを飲み込んだ。
「いや、その……成り行きで……」
「やべぇ!」
 さらに大波が2人をさらってゆく。
「タイダルウェイブ、以下省略ーーー!!!!!」

 ユーリの予想は当たった。
 パティ以外の男3人に訪れた恐ろしき災厄。
 それは、ブレイブ・ヴェスペリアの間で、後々まで語り継がれることとなった……

--------------------------------------

※参考スキット…「点数」


+++読まなくてもいい話+++
フレンの新たなる一面を見れたスキット「点数」! ステキすぎるよ、フレン。大好きだよ、フレン。
なんかね、レイヴンに丁寧なフレンが最高にいいですよね。だってフレン、シュヴァーンのこと尊敬してたっぽい!
言動から察するに、そうとしか思えないです!!!
ということで、フレンのつけた点数ですが、あくまでもギャグですのでっっっっ。
ジュディスの水着姿に「確かに圧倒的」とかもらしてたので、あのくらいの点数つけるかなー?
あとは、ヒロイン♪エステルには、おっさんよりもいい点つけたかなー?とか思いまして。
個人的には、ジュディスちゃんは別格としても、リタっちの水着姿、すっっっっっごく可愛いと思います♪
追記■魔法の名前を素で間違ってたので修正……。カタカナって難しい…。2010/5/9
      トップへ戻る
2010. 1.23.















 

g